生成AI技術は日々発展を遂げ,プログラムコードの自動生成への応用の期待がある.高性能計算(HPC)においては高性能を達成するため,アーキテクチャ・システムごとに性能最適化されたコードの開発が重要である.本プロジェクトではアーキテクチャごとに最適化された高性能コードの生成AIによる自動生成技術を開発し,科学技術計算の持続的な性能向上の達成を実現するため,名古屋大学情報基盤センターを中心とした日本国内の大学・研究所による共同研究を実施する.
スーパーコンピュータ「富岳」に代表されるスーパーコンピュータ技術の進展により,ソフトウェアの高性能化が進んでいる.現状は,Fortranによる信頼性の高いコードと,MPI (Message Passing Interface) による分散並列化の技術によって支えられている。一方,近年のAIブームでGPU (Graphics Processing Unit) の普及が進み,電力効率に優れたGPUの数値計算への活用が期待されている.しかしHPCを支える人材は減少しており,GPU実装やHPCプログラミングができる研究者は少ない.この現状打破のため,本プロジェクトではLLMやRAG (Retrieval Augmented Generation) を活用したコード生成AI技術により高性能HPCソフトウェアの開発効率を高める革新的AI基盤の開発を目指す。さらに当研究室で研究されている,混合精度演算,自動性能チューニング (Auto-tuning, AT),および説明可能AI(XAI)の技術を統合することで,持続可能なHPCソフトウェア基盤の構築を目指す.
また,セキュリティや研究上の制約でローカルLLMしか使えない局面は多い.HPC-GENIEプロジェクトでは,ローカルLLMの活用方法も研究対象とする.また,我が国で開発されている和製LLMの適用も考慮し研究を進める.特に,Swallow LLMのローカルLLMへの適用検討を進める.

開発対象
- HPCコード生成を実現するためのプロンプトエンジニアリング方式
- 複数のLLMが利用できるCLI (Command Line Interface)の開発、及び、ソフトウェア自動チューニング(Auto-tuning, AT)機能との連携
- HPCコード生成を実現するためのRAG (Retrieval Augmented Generation) 、およびファインチューニング機能の開発
- HPCコード生成を実現するためのローカルLLMの活用方式
- コード生成AIによる、精度保証、混合精度演算、説明可能AI(XAI)およびATコードの自動生成
- 開発するコード生成AI基盤/ツール群はオープンソース化を行い、ソフトウェアの持続可能性(Sustainability)を高める
研究発表
- 林俊一郎,片桐孝洋,星野哲也,大島聡史,河合直聡,永井亨,「3Dify:対話型分散フレームワーク -RAGを用いたマルチDCC対応プロシージャル3D生成LLMエージェント」,情報処理学会 第87回全国大会,2025年3月15日.
- 林俊一郎,「Dify:対話型分散フレームワーク ―RAGを用いたマルチDCC対応プロシージャル3D生成LLMエージェントー (3Dify: Distributed interactive framework - your LLM Agents for Multi-DCC Compatible Procedural 3D Generation with RAG -), 名古屋大学情報学部コンピュータ科学科情報システム系 卒業論文,2025年2月.
- 林俊一郎,3dify-project, https://github.com/3dify-project.
- Daichi Mukunoki, Shun-ichiro Hayashi, Tetsuya Hoshino, Takahiro Katagiri, Performance Evaluation of General Purpose Large Language Models for Basic Linear Algebra Subprograms Code Generation, arXiv preprint arXiv:2507.04697, 2025.
- 【発表予定】 林俊一郎,椋木大地,大島聡史,片桐孝洋,星野哲也,「MCP・RAGを用いたプロシージャル3D生成LLMエージェント3Difyの提案とスパコンの利用」,第200回ハイパフォーマンスコンピューティング研究発表会(SWoPP2025),2025年8月.
- 【発表予定】 椋木大地,林俊一郎,星野哲也,片桐孝洋,「BLASコードを題材としたGPTモデルによる数値計算コード実装支援に関する考察」,第200回ハイパフォーマンスコンピューティング研究発表会(SWoPP2025),2025年8月.
- 【発表予定】 林俊一郎,椋木大地,星野哲也,片桐孝洋,「HPC-GENIE: High-Performance Computing with Generative Neural Intelligence for Execution」,xSIG 2025,ポスター発表,2025年8月.
- 【発表予定】片桐孝洋,「HPC-GENIE:コード生成AIを活用したHPCプログラム自動生成プロジェクト ーFortranからGPUコードの自動生成は可能か?ー」,第33回AT研究会オープンアカデミックセッション(ATOS33),2025年7月28日.
- 【発表予定】林俊一郎,「DifyのLLMエージェントとRAGを用いたHPCコード生成の展望」,第33回AT研究会オープンアカデミックセッション(ATOS33),2025年7月28日.
- 【発表予定】椋木大地,「LLMによるBLASコード生成に関する考察」,第33回AT研究会オープンアカデミックセッション(ATOS33),2025年7月28日.
- 【発表予定】片桐孝洋,林俊一郎,椋木大地,星野哲也,大島聡史,HPC-GENIE: LLMを利用したHPCコード自動生成プロジェクト -- 概要とケーススタディ--,日本応用数理学会 2025年度年会,2025年9月2日〜4日.
関連イベント
- 第33回AT研究会オープンアカデミックセッション(ATOS33) 特別企画「LLMによる生成AIのHPC適用」(2025年7月28日,名古屋大学情報基盤センター)
- Second ITC-NU High Performance Computing Division International Seminar(2024年7月25日,名古屋大学情報基盤センター)
- Workshop on Numerical Computing and Software Productivity in Nagoya (WNCSP2023)(2023年8月30日,名古屋大学情報基盤センター)
研究参加者
随時更新します.
- 片桐 孝洋(名古屋大学 情報基盤センター 教授)
- 星野 哲也(名古屋大学 情報基盤センター 准教授)
- 椋木 大地(名古屋大学 情報基盤センター 助教)
- 森崎 修司(名古屋大学大学院 情報学研究科 情報システム学専攻 准教授)
- 大島 聡史(名古屋大学 情報基盤センター 招へい教員 / 九州大学 情報基盤研究開発センター 准教授)
- 林 俊一郎(名古屋大学大学院 情報学研究科 修士1年)
研究助成
本プロジェクトは以下の研究助成を受けて実施しています.
- JHPCN2025採択課題(jh250015)ソフトウェア工学による自動チューニング技術の新展開 (課題代表者:片桐孝洋)https://jhpcn-kyoten.itc.u-tokyo.ac.jp/abstract/jh250015
更新履歴
- [2025年7月8日] 研究発表等の情報を更新しました.
- [2025年7月4日] 研究発表等の情報を更新しました.
- [2025年6月30日] 研究発表等の情報を更新しました.
- [2025年4月16日] 本ページを開設しました.
お問い合わせ先
椋木 大地(名古屋大学 情報基盤センター) (mukunoki <at> cc.nagoya-u.ac.jp)